新潟県の加茂暁星高校の野球部でマネジャーをしていた女子生徒(16)が練習直後に倒れ、今月5日に死亡しました。
家族によると、女子生徒は倒れた時に心室細動を発症していたとのこと。
自動体外式除細動器(AED)を使えば、救える可能性がある症状ですが、監督の判断で使用はなされませんでした。
あなたが生きていく中で、もしAEDの使用が必要になった時、落ち着いて救命にあたることができるでしょうか?
AEDの設置が広がっても突然死が後を絶たない背景には、AEDの性能についての理解が深まっていないことや、卒倒などの場面に遭遇すると、落ち着いて使いこなせない実情があるようです。
心室細動とは?
女子生徒を襲ったとされる心室細動とは一体どのような症状なのでしょうか?
もしもあなたの身近に起きた時にどのように対処すれば良いのかも踏まえてお話します。
心室細動の原因は?
急性心筋梗塞(しんきんこうそく)や心不全の進行に伴って心室細動が起こったり、全身状態の悪化で生じた電解質の異常(体液のミネラル成分のバランスが大きく崩れること)から心室細動が起こることがあります。
女子生徒のケースでは、走って汗をかき体液のミネラル成分のバランスが大きく崩れた可能性が高そうです。
心室細動の症状は?
心室の筋肉の規則的な収縮は失われ、ただ不規則に細かくけいれんしているだけになります。
心電図上でも規則的な波形は消え、不規則に震えるような波形だけになります。
心室細動になると心室のポンプ機能は失われ、血液を送り出せなくなり、結果として血圧はほぼゼロになり、脳は虚血状態になり意識は消失し、そのまま心室細動が続けば死に至ります。
心室細動が自然におさまることはまれです。
つまり、発症した場合は何らかの処置を施さなくては、助かる可能性はほとんど失われてしまうということです。
心室細動の対処法は?
自動体外式除細動器(AED)などを使って、胸部から直流電気ショック通電を行うと心室細動がやみます。
これを直流通電除細動(じょさいどう)といいますが、心室細動に対する最も確実な治療法です。
適切な治療が行われないと、3〜5分間で脳死になる可能性が高くなるといわれています。
心室細動に陥ってから時間がたてばたつほど、除細動の成功率は低下します。
また、時間がたてば、仮に除細動が成功しても脳に酸素が供給されなかった時間が長くなり、女子生徒の死因となった低酸素脳症(ていさんそのうしょう)の後遺症が残る可能性が高くなります。
AEDとは?
AEDは、心臓がけいれんしたような状態(心室細動)になり、血液を送り出せなくなっている状態を、電気ショックを与えて正常なリズムに戻すための機器です。
AEDの使い方動画
緊急時にはこのように救援の助けてを借りつつ、人工呼吸と胸骨圧迫を繰り返し、AEDを適切に使用することが大切です。
知識を持っているだけでなく、使用してはじめて命を救うことに繋がります。
今日あなたの目の前で倒れる人が現れても、こうして救うことができるかもしれませんね。
校内のAEDは、女子生徒が倒れた玄関に近い事務室の前など計3カ所ありましたが、使われないままに終わってしまいました。
加茂署によると、病院に運ばれた生徒は8月5日、低酸素脳症で死亡しています。
日本救急医学会の指導医の太田祥一医師は「死戦期呼吸と普通の呼吸とを見分けるのは、一般市民には難しい」と指摘していますので、医者ではない監督が見分けることは難しかったのでしょう。
死戦期呼吸の認知度が低いことも、AEDでの素早い処置に思いが至らない要因の一つとみられます。
死戦期呼吸とは?
こちらの動画では、女子生徒が発症したとされる死線期呼吸の特徴と、対処法について紹介しています。
普通の呼吸と死線期呼吸の違いがとてもわかりやすくまとめられていましたね。
見分けることが難しいと言われていますが、落ち着いて観測すれば案外わかるものかもしれません。
生徒の父親(42)は「AEDを使ってほしかった。助かったかもしれないと思うと、つらくて悔しい」と朝日新聞の取材に苦しい胸の内を語りました。
明るくて面倒見のいい性格で、部活が大好きだったといいます。
女子生徒は7月21日午後、練習があった野球場から学校まで約3・5キロを走った後に倒れ、野球部の監督は「呼吸はある」と判断し、AEDを使わずに救急車の到着を待ちました。
しかし、その呼吸は、「死戦期呼吸」というものだった可能性があったといいます。
心停止の状態になっても、下あごだけが動いたり、しゃくり上げるようなしぐさをしたりして、呼吸をしているように見えることがあるので、状態をよく見ることが大切です。
もしも監督が最適な処置を施していたとしても、女子生徒の命が救われたかは誰にもわかりません。
できることがあったなら、やってあげたかったと後悔してももう手遅れです。
女子生徒の死を無駄にするかしないかは、この事実を知った私たちに託されています。
あなたがもしもAEDを必要とする場面にいきあった時、その命を救えることを心より祈っています。