生きている家を背負いながら暮らすヤドカリ「スツボサンゴツノヤドカリ」が京都大学によって新たに発見されました。
ハウルの動く城を彷彿させるヤドカリですが、彼の持つ宿はガラクタの集合体ではありません。
一体どんな生き物なのか?早速見ていきましょう。
京都大学が新種のヤドカリを発見
2017年10月6日京都大学(京大)は、生きたサンゴを家として持ち運ぶ新種のヤドカリを調査し、「スツボサンゴツノヤドカリ」と命名したことを発表しました。
同成果は、京都大学大学院人間・環境学研究科の修士課程 井川桃子氏(研究当時)、加藤真 教授らの研究グループによるもので、9月20日付の国際科学誌「PLOS ONE」に掲載されています。
砂泥底を自由に動きまわって生活する単体サンゴであるムシノスチョウジガイやスツボサンゴの内部には渦巻形の空洞があり、そこには通常、環形動物のホシムシが棲み込んでいます。
サンゴがホシムシの棲み家となってホシムシを守る一方で、ホシムシはサンゴを引きずって移動し、砂泥中へ沈むのを防ぐという共生関係があることが知られていますが、これまで共生者がまったく別の生物に置き換わる事例は知られていませんでした。
今回、同研究グループは、奄美群島加計呂麻島で採集された生きたサンゴにおいて、ホシムシではなく新種のヤドカリが棲み込んでいることを発見。
「あれ!なんかいつもと違うやつが入ってる!」と研究者は驚いたことでしょうね。
同ヤドカリの形態や行動を観察し、サンゴとの共生関係における同ヤドカリの役割や特徴を調べたところ、ツノヤドカリ属の新種であることがわかったため、「スツボサンゴツノヤドカリ(Diogenes heteropsammicola)と名付け、新種として記載しました。
英語で表記されると大体の生物がカッコ良さを増しますが、このヤドカリも例外ではありません。
また、同ヤドカリにおいては、ホシムシと同様にサンゴを牽引し、転倒や砂泥中への埋没からサンゴを救出している様子が確認されています。
さながら背中を預け合う戦士のようですね。
貝殻に棲むヤドカリの場合、ヤドカリは成長するとより大きな貝殻へ引っ越す必要があるが、スツボサンゴツノヤドカリはヤドカリと共に成長する生きたサンゴを家としているため、生涯引っ越しをしなくて良いものと考えられています。
人間でも「うちの子も大きくなるし、引っ越しをしようかしら?」と住居の変更を余儀なくされますが、このヤドカリは1枚上手です。
同研究グループは、それぞれの共生の詳細な比較やサンゴ化石の観察などを通じて、宿貸し・牽引共生の進化の歴史を明らかにしていくことが今後の課題であるとしています。
スツボサンゴツノヤドカリとは?
出典 京都大学
「スツボサンゴツノヤドカリ(Diogenes heteropsammicola)
スツボサンゴツノヤドカリは今のところ奄美でしか発見されておらず、奄美、そして日本の海の貴重さを物語る生物であると言えます。
単体サンゴとホシムシ・ヤドカリとの共生関係がどのように進化してきたのかについては、未解明の点が多く残されていて、それぞれの共生の詳細な比較やサンゴ化石の観察などを通じて、宿貸し・牽引共生の進化の歴史を明らかにしていくことが今後の課題となっています。
見れば見るほど奇妙なヤドカリに、今後の研究が楽しみです!