私たちは生きることで喜びを得ることもあれば、反対に苦しみに直面することもあります。
お釈迦様の言葉を借りるなら「生きることは苦しみ」
芥川龍之介の言葉を借りるなら「人生が楽だというものがいればそれは馬鹿か頭のおかしな人である」
この言葉をざっくり要約すると、生きている限り死はやってくる、呼吸をするのも食事をするのも死から逃れるためである、しかし生きている限り死の苦しみから逃れることはできない。
という意味が含まれているとされてます。
あなたも生きている限りは苦しいことや悲しい気持ちになることもあるでしょう。
死そのものどうにかする方法は不明ですが、悲しみを和らげる方法はこの世に存在しています。
今回は人間の感情の一つである「悲しみ」について考えてみましょう。
悲しみとは?
はじめに今回のテーマである悲しみについて定義をしていきます。
悲しみとは、心の痛み、辛くて泣きたい状態。
無力感、挫折感。失望感、脱力感などを伴い、「胸が締め付けられる」「表情がこわばる」「意欲や行動力、運動力が低下する」「自分の世界へ引きこもる」「涙が出る」といった身体的反応も含めて悲しみとします。
悲しみと前頭前野の強い関係性
人が感じる悲しみと、犬や猫などの動物が感じる悲しみには種類が違うものもあります。
肉親の死なら犬や猫でも悲しみを感じるでしょう。
しかし、悲劇的な映画や小説を観て悲しみを感じたりはしません。
それで悲しみを感じることができるのは人間だけです。
この違いは脳の認識が関係しています。
私たちは余命宣告されたとき「自分は病気である」「その病気は命に関わるものだ」といった様々な情報を前頭前野が関連付けて理解するからこそ悲しいのです。
恋人に別れを告げられたときも、相手の言葉の意味を理解し、さらに性格や態度や口調、状況などを考え合わせ、その言葉が真実だと確信していなければ悲しみは生じないでしょう。
私たちは悲しみをもたらす「情報を受容」し、受け入れなければ悲しみは生じません。
この「情報の受容」のプロセスに主に前頭前野が関わっているのです。
前頭前野には、自我や世界観や信念が存在していて、その部分を形成しているものが突然崩されたりして、それを受け入れなければならなくなったとき、私たちは悲しみを感じるのです。
悲しみのメカニズム
私たちは目や耳からなどから入ってきた情報や頭の中で過去や未来をイメージしたりすると、海馬や扁桃体、視床、側坐核島皮質、腹側被蓋野、そして前頭前野といった脳の各部位が連絡しあって、記憶や脳内の認識パターンと照らし合わせ、それがどのような情報であるかを評価します。
認識パターンによっては他人の不幸を自分の事のように悲しむ人もいれば、蜜の味がすると嬉しそうに口角を上げる人もいます。
そうして情報処理をした結果これは「悲しみをもたらす情報である」と判断が下されると、報酬系であるドーパミンの分泌が抑えられ、戦闘と逃避の準備をする内分泌物質であるノルアドレナリンが分泌されたりします。
喜びが感じられなくなったり食欲がなくなったりするのもこのためです。
悲しみへの処方箋
今回は悲しみのメカニズムに関するお話でした。
発生する理由がわかるだけでも、悲しみに囚われるといったことは少なくなるでしょう。
おまけに、具体的な対処法について3つほど紹介しておわりにしたいと思います。
- 悲しみがもたらす情報をあらかじめ受け入れておく。
大切な人との別離なども「この世に変わらないことはない」「あらゆる命はいつか終わりがくるものだ」などあらかじめ受け入れることで悲しみを軽減できます。 - 徹底的に悲しむ
どんな神経伝達物質や内分泌物質がでても、最後には精神の安定をもたらすセロトニンが分泌されるようにできています。
個人差はありますが私たちが悲しみに浸っていられるのは数日から数十日です。
その間限界までに悲しめば、後は気持ちを引き上げていくしかありません。
私たちはどんな悲しみも乗り越えることができるのです。 - 悲しみを後回しにする
失恋したときなどに、あえて大変な仕事を引き受ける人がいますが、実は理にかなっています。
脳がより優先な事柄を認知すると、悲しみは後回しにされます。その結果、前頭前野を優位にし扁桃体による感情の増幅が抑えられるので、忙しさが落ち着くころには時間が過ぎていますから、悲しみの感情はだいぶ薄らいでいるはずです。
生きている限り消えない悲しみのを抱えることもあると思います。
しかし私たちはそれを乗り越える強さを必ず持っています。
あなたやあなたの周りの人が辛い時に、この記事を役立てていただければ幸いです。
またお会いしましょう、それでは~